2005年12月23日

石原千秋『国語教科書の思想』

若い頃には思いもよらなかったほど、教育への関心が強くなってきました。それに対応して、読む本の比重もずいぶん変わってきています。さて、石原千秋『国語教科書の思想』(ちくま新書)。

PISA(生徒の国際学習到達度調査:Programme for International Student Assessment)が求める読解力(p. 55):

  1. 文章や図や表から情報を読み解く力。
  2. 文章を批評的に読む力。
  3. これらを記述する力。

「教育には、時間とお金がかかるのだ」(p. 59)

「メッセージは具体的な誰かに向けて発信するからこそ意味がある。それが身に付かなければ、かえって『自分はすべて表現したのだから、理解できない向こうが悪い』という自己中心的な感情を生む結果を招くことになりかねない。表現はマスターベーションではないということを、子どもの時からきちんと身に付けさせるべきだろう」(p. 131)

「最近の若者はコミュニケーション能力が低いとか、会社の採用試験で最も重視するのはコミュニケーション能力であるとか、コミュニケーションが希薄だったために心の病にかかったとか自殺してしまったとか、そういったコミュニケーションに対する社会的要請(本当なら『経済界からの要請』とでも言うべきだろうか)に真っ直ぐ応える構成になっているのである」(p. 148)

「ここには『他者』がいない。自分と『同じ』でなければ、相手を尊重できないのだ。しかし、コミュニケーションを通わすことができないような『他者』であっても、その尊厳は尊重しなければならないだろう」(p. 161)

「わたしたち」と「一人一人」の使い方(p. 168)

「『一人一人』というレトリックは社会への無関心を生むのである。社会への関心を失った個人が、それでも『一人一人』の義務だけは果たす社会が来れば、誰がいちばん得をするのだろうか。権力を持っている者であることは、言うまでもないだろう」(p. 174)

論証のプロセスをあげずに、結論的なところからいくつか抜き書きしてみました。それなりに納得するところが多いのは、自分が保守化したからか・・・・・・

均質な解釈の押しつけと、おそらくはそれに対する反発としての側面もあるであろう何でもありあり。後者はネット上でよく観察されます。いずれにせよ欠けているのは、高度な形式的操作の技術とアクチャリティ。
posted by いんぷうしゃあ at 14:30| Comment(1) | TrackBack(4) | 言語教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
流石に色々な本を読んで研究されているなあと思いました。以前お伺いした「言語政策」ですが、今度LACEで学会発表(世界の言語政策)をされる方がいらして、楽しみにしているところでもあります。
Posted by Mieko Ota at 2009年12月06日 03:21
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石原千秋『国語教科書の思想』ちくま新書
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