2009年04月07日

翻訳支援

翻訳支援システム構築第一期4年間のプロジェクトが一段落ついた。とりわけ岡大竹内研・名大佐藤研・筑波大宇津呂研にはお世話になった。また最終年度から始まったNICTとの共同・(株)三省堂の協力で、翻訳支援を社会的に生かせる枠組みも作ることができた。ちなみに翻訳支援エディタの最初のプロトタイプ構築には、TriAxさんを使った。

「みんなの翻訳」記事は:
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/04/06/23048.html
http://scienceportal.jp/news/daily/0904/0904092.html
http://johokanri.jp/stiupdates/info/2009/04/002996.html
http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-aa36.html
ほかに今のところ「日経産業新聞」さん(4月7日)、「電波タイムズ」さん(4月10日)など。

幸い、第二期4年の予算がついたので、次のステップに行ける。研究・開発目標を整理して、研究発表と応用システムのバランスを取りながら、きちんと進めること。

簡単な使い方の説明が必要。

予算の申請書を書く際には研究論文を書くときよりも多くの文献を読み関連情報を広く集めて具体的な目標を整理し文章も推敲したので、また一般に何事もすぐ飽きて面倒になってしまう私としては具体的な像を持ってぜひ続けようと意欲を持っていたので、さらに所属研究室は文科系の研究室の中では比較的恵まれているとはいえ基盤研究費を流用するほど余裕がないので、予算が通って、ホッとしている。
posted by いんぷうしゃあ at 12:45| Comment(4) | TrackBack(0) | 言語応用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
プロ翻訳者(志望者含む)のメーリングリストを運営しております。先日「みんなの翻訳」の存在を知り、ML上で紹介させていただき、少しメンバーと議論しました。個人的には非常に面白い試みだと思いますが、プロの視点からは「実用性がない」という声もあるようです。今後の改善に期待しています。
Posted by Patty at 2009年04月22日 23:37
Pattyさま、コメントありがとうございます。また、メーリングリストでのご紹介、ありがとうございました。

システムの有用性および「みんなの翻訳」の位置づけについて、簡単に私の考えを述べておきます。

「プロ」をどう定義するかにもよると思いますが、例えば、カナダの政府契約職業翻訳者は、翻訳支援に頼れるようではそもそも「プロ」ではないわけで(翻訳メモリーやコンプリーションのスピードよりも実際に頭で訳して打っていくスピードの方が早いのがトップ・プロで、翻訳支援を使って効率を改善する余地がある程度の翻訳者はまだ見習いレベルなわけですから)、そうしたプロに実用的な翻訳支援システムというのはほぼ原則的に語義矛盾となります。

それに対し、「みんなの翻訳」は、
(1) オンラインのボランティア翻訳者向け、
(2) 特に初級から中級および潜在的なボランティア翻訳志望者向け
(3) また、NGOやNPOなど向け
を当初からうたっており、そうしたクラスのユーザには実証評価も経て、時間削減と訳質の相対的改善について、高い実用性を確認しております。ラボレベルの評価だけではなく、私の周囲で時事系の翻訳本を数十冊翻訳している人は、QReditを便利に活用していますし、いくつかのNGOも「みんなの翻訳」を利用しはじめています。「みんなの翻訳」を利用して訳した本もすでに出版されている1点に加え、これからいくつか出版されます。その点で、私たちの課題は基本機能仕様ではなく、むしろ性能の維持と安定運用の段階になっています。

もともとローカライゼーションや産業翻訳から文学翻訳まで、ボランティアから「プロ」まで、記事翻訳から単行書翻訳まで、同じ「翻訳」とうい言葉で示されていても、その活動とそれに必要な属性は大きく異なりますから、オンラインのボランティア向けシステムを有用と感じない「プロ」の方(あるいは上で述べたように本当の「プロ」はそもそも支援システムなどいらないべきなのでしょうが)がいるのは自然かつ当然のことだと思っています。その中で、翻訳者一人一人に最適の支援システムをというのは実質上無理ですから、いくつかのクラス・スタイル別に、有用な支援システムが複数できて、異なる翻訳スタイルの人が使える支援システムの選択肢が増えるといいですね。今のところ、TRADOSやIdiom WorldServer、DejaVu、Omega-T、ほかに日本のシステムなどもいくつかありますが、無料のものの選択肢が少ないのは少し残念です。
Posted by いんぷうしゃあ at 2009年04月25日 22:21
お返事をいただき、ありがとうございます。

先生の目的、理想としていらっしゃることは、サイトを実際に見たり、プレスリリース等を読んだりして理解しておりますし、ここまでの枠組みをつくられたことに対しては尊敬の念を抱いております。

一方で、翻訳業界に及ぼす影響、日本人の国語能力に及ぼす影響などについて、どれだけ考慮していらっしゃったのかと疑問に思うのです。

おっしゃるとおり、翻訳支援ツールに頼るようでは本物のプロとはいえません。しかし実際には、IT系ではなくとも、支援ツールを導入して効率化を図ることで収入をあげていかなくては(どれほど腕のあるプロでも)満足に生活していけないほどに翻訳価格は下落の一途をたどっています。ましてや、産業翻訳者の多くがIT関連であり、Web上の文書も大事な収入源です。「これからWeb上のコンテンツは無料で翻訳できる」という一般概念が浸透すれば、彼らの仕事に大きな影響が及びます。Web上の文書といっても、このネット時代、IT関連のものにはとどまりません。つまり影響を受けるのはIT翻訳者だけではないわけです。

もう一点は、「翻訳メモリの共有」です。現状での、あまり質が良いとはいえない翻訳が共有されることにより、そのメモリを使用する初級・中級レベルの翻訳者のスキルは「そこ止まり」か、低下します。また、明らかにおかしい機械翻訳ならば「おかしい」と判断できる一般人も、中途半端な人手による自動翻訳の日本語であればその判断がつかず、おかしな日本語に慣れてしまう危険性があります。日本人の国語能力が翻訳文書だけに左右されるわけではありませんが、これだけ翻訳物が世に出回る現状では、多くの人の目に触れる翻訳の質を無視することはできません。

属性は異なっても、「翻訳」というテーマでつながっている以上は無関係ではなく、特にそれで糧を得ているマジョリティへの影響は無視されるべきではないと思います。企業・組織・利用者の利益は多いけれども、労力を提供する側には利益が還元されてこなかった結果が、いまの景況につながっていることを考えれば、「みんなの翻訳」がその傾向に拍車をかけることも予想されます。

ネガティブな意見ばかりで申し訳ありません。メーリングリストでは、「否定的にとらえず、有効利用するように個々人が考えましょう」と個人的には意見しています。ただ同時に、業界にいる者としては、もう少し業界への配慮があってもいいのではないかと思いました。何万人といる翻訳者の中のごくわずかなトッププロだけが生き残れればいい、とは私は考えていません。下を支える底辺がなくなれば頂の高さも低くなるでしょう。

長々と失礼いたしました。



Posted by Patty at 2009年04月26日 04:41
Pattyさま:

お返事ありがとうございました。Pattyさまのお考えはある程度わかりましたので、簡単にそれに対するコメントを書きます。

(1) 国語能力:「日本語」でしょうか? この言葉遣いから、現状および将来の言語環境に関する認識と構想がおそらく大きく異なっているだろうことが伺えます。

(2) 翻訳者の単価引き下げについて。これは労働運動の問題だと思います。最近は一人でも入れる労組がありますから翻訳者も労働組合を作られる(もうあるのかとは思いますが)のが解決への一歩ではないでしょうか。なお、テーマが好きで翻訳をしているボランティア翻訳者は、別の人が翻訳してくれるのでも構わないことが少なからずありますが、それにもかかわらずボランティアで翻訳するのはどうしてか、と考えますと、単にそれはそもそも翻訳したい文書が、プロの方が扱うマーケットの射程に入っていないから、と思われます。そう考えますと、ボランティアの領域は、最低でもプロの方の領域と競合しませんし、また、可能性としては翻訳の領域全体を広げることで市場も広げることにつながることもありうると考えています。

(3) ジャパン・タイムズの記事で、私は、"Most translation-aid tools out there assume human beings are not that clever," Kageura says. "We assume they are."と述べています。「訳文の質」について、少なからぬ人が色々言いますが、おそらくここでも、現状および将来の言語環境に関する認識と構想、人間の力について異なる立場にたっているものと予測されます。

ブログのコメント欄でやりとりするのでは限界もありますし、誤解を生んでしまう恐れもありますので(すでに私の上のコメントが誤解されないかと少し恐れております)、私の側からはこれで打ち切りにします。せっかくなので、一度、遊びに来ませんか? よろしければ続きはそのときにお話しましょう。私のメルアドは公開されていますから、ご連絡いただければ幸いです。
Posted by いんぷうしゃあ at 2009年04月26日 08:53
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